まとめトピックスでは、現在読みたいお話しのジャンルを募集しております。ぜひともお問合せよりご連絡ください。こちらから投稿

【怖い話|短編】コンビニの幽霊

コンビニの幽霊
目次

コンビニの幽霊

夜中の2時、街の明かりは消え、薄暗い街灯だけが通りを照らしていた。ほとんどの家々は静まり返り、住人たちは深い眠りに落ちていた。しかし、紗季はベッドの中で目を開けたまま、天井を見つめていた。何度も寝返りを打ち、心の中に渦巻く不安を振り払おうとしたが、どうしても眠りにつくことができなかった。

気分転換に何か甘いものでも食べようと考えた紗季は、近くのコンビニへ向かうことにした。少し冷たい夜風が肌を刺すように感じたが、彼女は気にせず家を出た。

真夜中のコンビニに到着する紗季

歩いて5分ほどのところにあるそのコンビニは、24時間営業しており、いつでも明るく、安心できる場所だった。

コンビニの自動ドアが音を立てて開くと、中から冷たい空気と共に、独特の蛍光灯の明かりが紗季を迎え入れた。店内はひっそりと静まり返っており、棚の間には誰一人いなかった。レジカウンターの向こうにいる店員は、年配の男性で、紗季が入店したことに気づかない様子で、首を垂れて眠っているようだった。

紗季はアイスクリームの冷凍ケースの前で立ち止まり、どれを選ぶか迷っていた。バニラか、チョコレートか、あるいは新商品のストロベリーチーズケーキか。考え込んでいると、ふと冷凍ケースのガラスに映った自分の背後に、誰かの影がちらりと見えた。

冷凍ケースに映る不気味な影

驚いて振り返ると、店内には誰もいなかった。心臓が一瞬止まるような感覚に襲われたが、紗季はそれを「見間違いだ」と自分に言い聞かせた。再び冷凍ケースを覗き込むと、何事もなかったかのようにアイスクリームを選び、レジへ向かった。

レジの店員は、紗季が商品を置く音で目を覚ました。彼の顔はやつれ、目の下に濃いクマができていた。彼はぼんやりとした目で紗季を見つめ、異様に低い声で「お探しのものは見つかりましたか?」と尋ねた。

「はい、これでお願いします」と紗季は答えたが、店員の視線は彼女の後ろに注がれていた。まるで誰かが後ろに立っているかのように、彼の目は一点を見つめて動かない。紗季は不安が胸に広がるのを感じながら、早く会計を済ませたいと急いだ。

レジの作業は遅々として進まなかった。店員は、レジのボタンを押すたびに手が震え、その音が妙に耳に残った。ようやく支払いを終え、紗季が袋を受け取ろうとしたとき、突然コンビニの自動ドアがガタガタと音を立てて開いた。

不気味な店員と紗季

冷たい風が一気に店内に吹き込んできて、紗季の髪を乱した。その風に乗って、どこからかかすかに「戻ってこないで…」という声が聞こえた。紗季は驚いて後ろを振り返ったが、そこには誰もいない。ただ、自動ドアの外には暗い夜が広がっているだけだった。

紗季は恐怖に駆られ、その場から逃げ出した。家に向かって全力で走り、冷たい汗が背中を伝うのを感じた。家に着くと、ドアを強く閉めて鍵をかけ、その夜は震えながら布団にくるまっていたが、一睡もできなかった。

翌朝、紗季は自分が見たものが何だったのか確かめるため、あのコンビニのことを調べてみた。ネットで検索すると、驚くべき事実が明らかになった。彼女が訪れたコンビニは、実は数週間前に火事で全焼し、店員も一人亡くなっていたというのだ。そのニュースを見た紗季の手は震え、昨夜の出来事が現実だったのか、それとも夢だったのか、全く区別がつかなくなってしまった。

コンビニを後にする紗季

ただ一つ確かなことは、紗季は二度と夜のコンビニへ行くことはなくなったということだった。それ以降、夜中に目が覚めるたびに、彼女の耳にはかすかな囁き声が聞こえるようになった。「戻ってこないで…」その声は、彼女をいつまでも追いかけてくるかのように感じられた。

Feature

特集カテゴリー

コンビニの幽霊

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次