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【怖い話|短編】同僚

同僚
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同僚

私は小さなオフィスで働いている。

従業員は10人ほどで、みんなの顔は覚えていたし、どの席に誰が座っているかも把握していた。ところが、ある日、オフィスに見慣れない男性が座っていた。30代半ばくらいのその男性は、少し古びたスーツを着ていて、静かにパソコンに向かって作業していた。

見慣れない男性の出現

初めて見かけたが、特に自己紹介もされなかったので、入社したばかりの新しい社員だろうと思って気にしなかった。

しかし、その後も彼は無言で、誰とも会話することなく、黙々と作業している様子が続いた。普通、新人なら自己紹介があるし、少なくとも業務の合間に誰かと話すはずだ。だが、その男性は誰とも話すことなく、昼休みも一人で机に座ったままだった。その異様な光景に私は少し不気味さを感じ始めた。

男性が無言でいる不気味さの強調

次の日、彼はまた同じ席に座っていた。私は「おはようございます」と声をかけたが、彼はただこちらをじっと見つめるだけで何も答えなかった。その瞳はどこか無表情で、冷たく、まるで感情がないようだった。その沈黙に不安を感じ、私は早々にその場を離れた。

昼休み、私は同僚たちとランチに行きながら、その男性について尋ねてみた。「あの、最近来た新しい人、誰なんだろう?」と。だが、同僚たちは一様に首をかしげた。「そんな人、見たことないよ」と一人が答えた。他の同僚たちも彼について何も知らないと言い、オフィスにそんな人はいないと断言した。

周りの誰も男性の存在に気づかない

それが信じられなかった私は、再びオフィスに戻ったとき、その男性が座っているのを確認しようとした。すると、彼はやはり同じ席に座っていた。私は見間違いなんかじゃないと確信したが、周りに聞いても誰も気にしていない。まるで私にしか見えていないようだった。

不安は日に日に増していった。彼が座っている席の隣に座っている同僚に「彼のこと気にならない?」と聞いてみたが、「誰のこと?」と返されるだけだった。彼の存在に気づいているのは、私だけだった。

ある日、仕事が終わり、帰り支度をしていたとき、ふと後ろを振り返ると、彼がまだオフィスに残っていた。暗くなったオフィスの中で、一人静かに座っている姿は異様だった。彼はじっと私を見つめていたが、やはり何も言わない。不気味な気持ちを振り払うように急いで帰宅した。

男性が座っていた席が空いていることに気づく

次の日、彼が座っている席を確認したくて、朝早くオフィスに向かった。だが、その席には何もなかった。書類もパソコンもなく、空っぽだった。彼が座っていた形跡すらない。私は上司に直接確認することにした。「あの席、誰か使っていますか?」と尋ねると、上司は困惑した表情で「その席はずっと空いてるよ。誰も使っていないはずだけど?」と答えた。

混乱した私は、その場で全身が冷たくなった。確かに彼は毎日そこに座っていたはずなのに、まるで幻を見ていたかのようだった。何かがおかしい。私の頭の中には、彼がじっと見つめていた無表情な顔がこびりついて離れなかった。

それから数週間後、隣の席に座っていた同僚が突然会社を辞めることになった。体調不良が原因だという。彼女は日に日に元気がなくなり、顔色も悪く、まるで何かに追い詰められているかのようだった。

体調不良で退職していく同僚たち

そして、彼女が辞めた後、その席に座った次の同僚も、やはり体調を崩して退職した。

オフィス内でその席は「呪われている」と噂されるようになった。私はそれを聞いて、あの見知らぬ男性が座っていたことを思い出した。あの男は誰だったのか?何の目的でそこにいたのか?答えを知るすべはなく、ただ恐怖が残るだけだった。

最後に彼の顔を思い出すと、あの無表情な瞳が、私に何かを伝えたかったのではないかという気がしてならない。しかし、その答えを知ることはもう二度とできないだろう。

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