閉鎖されたスタジオ
30年前、ある地方テレビ局の若手プロデューサー、高橋は、当時流行していた心霊番組の制作を担当していました。
番組はUFO、雪男、心霊写真などの話題を取り上げ、時には捏造された映像や画像も使用して視聴率を稼ぐことに躊躇いませんでした。特に人気のある恐怖映像にはドキュメンタリー企画を組み、さらに視聴者を引きつけていました。
ある収録日、番組の演出としてスタジオの照明を突然落とす計画がありました。高橋はこれによりスタジオの雰囲気をさらに恐怖に満ちたものにしようとしていました。
しかし、照明が消えた瞬間、通常とは異なる異常事態が発生しました。スタジオの一人の出演者が突然泣き出し、混乱しました。彼女は、スタジオの入り口に知らない女性が立ち、ボソボソと何かを話しかけていると訴えました。
高橋はすぐに照明を戻しましたが、そこには誰もいませんでした。
出演者はその女性が実際に存在したと強く主張し、非常に動揺していました。その女性は15メートルほどの距離があるにも関わらず、出演者にだけはっきりと見え、声も聞こえていたというのです。スタッフが録音データを確認しましたが、出演者が主張する女性の声は一切記録されていませんでした。
興味を持った高橋は、番組で何か使えるものがないかと考え、霊現象に挑戦的な態度で臨み、「おい!撮ってやるから出てこいよ!」とスタジオで挑発を繰り返しました。彼の挑発が続く中、奇妙な現象がエスカレートし、スタジオ内の物が勝手に動き出し、冷たい風が吹き荒れ、機材が故障しました。そして、最も危険な事故が起こりました。吊るされていた照明が高橋の目の前に落下し、彼がわずかに避けたために辛うじて命を落とすことはありませんでした。
出演者たちはこの現象に怯え、予定されていた撮影をキャンセルする事態になりました。
その責任を負う形となった高橋は、以降ゲッソリとして覇気がなくなりました。同僚たちは、重い責任からくるストレスだと思っていましたが、実際には高橋はスタジオでの怪奇現象以降、女性の幽霊に悩まされていました。
高橋はある朝、いつも通りに自宅を出て出社しましたが、その日を最後に彼の行方がわからなくなりました。後に彼は、怪奇現象が起きた2番スタジオで首を吊って死んでいるのが発見されました。
この事件がきっかけで、2番スタジオは永久に閉鎖されることになったのです。
コメント