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【怖い話|短編】閉ざされた道

閉ざされた道
目次

閉ざされた道

ある日、私は友人と一緒に彼女の実家へ向かうドライブに出かけた。彼女の実家は山間部の小さな町にあり、山道を通って行かなければならない。普段はドライブが好きな私も、今日はなぜか心がざわついていた。夕方の渋滞に巻き込まれ、目的地に到着する頃にはもう日が落ち始めていた。

山道へのドライブ開始

「もう少しで着くよ」と友人が言ったとき、私たちは山道に差し掛かっていた。辺りは街灯がほとんどなく、車のライトだけが頼りだった。道は狭くカーブが多いため、慎重に運転していたが、友人の様子がいつもと違って不安そうだ。普段は陽気な彼女が、この日ばかりは黙り込んでいる。

不思議に思って「何かあったの?」と尋ねると、彼女はため息をついて話し始めた。

「実はね、昔この道で大きな事故があったんだ。その事故で亡くなった人が多くてね、それ以来この辺りでは妙な噂が絶えないの。特に、あのトンネルの手前あたり…。」

彼女が指さす方向を見ると、朽ち果てたトンネルが遠くにぼんやりと見え始めた。古びたコンクリートの壁が闇の中で薄く光を反射している。私はその言葉を聞いて少し身構えたが、運転に集中することにした。しかし、友人の話が頭の中をぐるぐる回っていた。

トンネルに近づくにつれ、車の調子が急におかしくなった。

トンネルの手前で車が故障

エンジンの音が不規則になり、アクセルを踏んでも速度が上がらない。奇妙な感覚が私の背筋を走り抜けたが、気を取り直してアクセルを踏み込んだ。それでも車は前に進まず、逆に速度がどんどん落ちていく。

「どうしたんだろう…?」と私が呟いたその瞬間、友人が突然「止めて!」と叫んだ。

私は驚いて急ブレーキを踏み、車を道端に停めた。エンジンを切ると、あたりは静まり返り、聞こえるのは風の音だけだった。心臓がドキドキしているのが自分でも分かる。振り返って「何が見えたの?」と友人に尋ねると、彼女は震えた声で言った。

「トンネルの入口に…誰か立っていた。」

その言葉にゾッとしながらも、私は車のフロントガラス越しにトンネルの入口を見つめた。遠目には人影のようなものが見えるが、それが本当に人間なのか、何か他のものなのか、判別がつかなかった。影は不自然に揺れながら、まるでこちらを見つめているようだった。

トンネルの中に見える不気味な影

「早く行こう!」と友人が強く促す。私も動揺し、急いでエンジンをかけ直そうとしたが、今度はエンジンが全く反応しない。キーを何度も回したが、車はピクリとも動かない。焦りと恐怖が私を包み込み、冷や汗が流れ始めた。

「おかしい…なんで動かないんだ…」

その時、運転席の窓が突然曇り始めた。まるで寒い日のように白く曇ったガラスに、何かが指でなぞるような感触が伝わってくる。息を呑んでその曇りを見ると、そこにはゆっくりとした動きで文字が書かれていく。

「ここにいるな」

心臓が一気に跳ね上がり、私は窓から目を離せなくなった。友人は震えながらも必死に携帯を取り出し、誰かに助けを求めようとしていたが、画面を見ると電波が全く入っていないことがわかる。山奥では電波が届かないことも珍しくないが、今この瞬間にその事実が私たちをさらに追い詰めた。

辺りは完全に静まり返り、二人の呼吸音だけが車内に響く。時間が止まったように感じられた。

車内での緊張感

すると、唐突にエンジンが再び動き始めた。私は何も考えずにアクセルを踏み込み、車はトンネルへと向かって進み始めた。トンネルを抜けるまでの間、私たちは言葉を交わさなかったが、後部座席のミラーには、あの不気味な影がずっと映っていた。

その後、無事にトンネルを抜け、何とか友人の実家にたどり着いた。

トンネルを抜けた後の静寂

友人は何も言わずに家の中へ駆け込み、私はそのまま車に残された。あの文字、あの影、そしてエンジンの不調…。すべてが現実だったのか、夢だったのか、未だに判断がつかない。

だが、一つだけ確かなことがある。あの道を通る度に、私は背筋が凍るような感覚を抑えきれないのだ。

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