同窓会で会った友人
もし、連絡を取り合っている友人が、この世のものでないとしたら…あなたならどうしますか?
この話は3年前の秋、僕の身に起こった出来事です。
長崎の高校を卒業してから15年、僕は首都圏で暮らし、ほとんどの時間を仕事に費やしていた。そんなある日、20年ぶりの高校の同窓会の案内が届いた。この同窓会、地元ではなく、首都圏で暮らしてるみんなで集まろうと言う話だった。地元に残ってる人はほとんどいないのが理由だ。
仕事が忙しく、同窓会にはほとんど終わりかけの時間にようやく駆け込むことができたんだが、そこで洋一と再会した。高校の頃はそこまで話すこともなかったが、同窓会をきっかけに連絡を頻繁に取り合うようになった。お互いの家族の話や、子供がどうしてるか、休日はどこに行ったかという、まあ、他愛もない話題がほとんどだった。
そんなある日、実家の父から連絡が来た。
祖父が亡くなったと知らされた。96歳、大往生だった。葬儀のために一時的に長崎に帰ることになった。洋一にもそのことを伝えたら、「ちょっとしたお願いがあるんだけど」と言って、「ちより」というお土産を買ってきてほしいって頼まれた。
長崎へ戻り、祖父の葬儀は家族に囲まれて厳かに執り行われた。久しぶりに帰省したことで、祖父との思い出が次々と蘇ってきた。彼はいつも厳しいけれど、どこか温かみのある人だった。小さい頃、僕をよく肩車してくれたこと、祖父の畑で野菜を一緒に収穫したこと、夕食時にはいつも面白い話で僕たちを笑わせてくれたこと。そんな祖父と過ごした日々を思い出しながら、葬儀に臨んだ。
葬儀の後、家族や親戚との会話の中で、祖父が亡くなる少し前に、僕のことを誇らしげに話していたことを知った。離れて暮らしている僕のことを、いつも気にかけてくれていたんだという。それを聞いて、改めて祖父への感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
洋一のお願いを思い出し、「ちより」を探しに行く前に、祖父の墓前で手を合わせ、心の中で祖父に感謝を伝えた。そして、「ちより」を求めて、久しぶりに長崎の繁華街に出てみた。
繁華街は相変わらず賑わっていた。その時「そういえば!」と思いだしたんだ。繁華街には高校時代の友人「健太」が飲食店を経営している。早速顔を出すことにした。
店の扉を開けると、健太がにこやかに迎えてくれたんだ。「久しぶり!」と彼が言うと、自然と笑顔がこぼれた。店内には、懐かしい匂いと、どこか新しい香りが混じり合っていて、健太らしい店作りに感心した。カウンターに腰掛けると、彼はコーヒーを淹れてくれた。その間、僕たちは様々な話題で盛り上がった。
そこで洋一の話をしたんだ。「最近親しくしているんだ」と。
すると、健太の顔色が変わったんだ。「洋一がどうしたって?」。実は洋一は、高校卒業と同時に漁師になって、荒天の日に海に出たまま帰ってこなかった。1週間後、遺体で発見された。それはもう20年も前、高校を卒業して間もなくの話だった。
僕は彼とのメールを確認しようとスマホを開いた。
だが、洋一からのやり取りはすべて消えていた。その代わり、未読の一通が届いていた。開いてみると「ありがとう」とだけ書かれた、送信者不明のメッセージだった。
コメント