付き合っていた彼氏
ある晩のことです。
友人の美穂が、顔にはっきりと手の形が残るほどの暴行を受け、私のアパートに逃げ込んできました。美穂はこれまで何度となく、彼氏からの暴力に苦しんでいました。私は何度も「別れた方がいい」と忠告していたが、彼女はなかなか決断できずにいました。
しかし、この日の出来事が彼女を決断させたみたいでした。
美穂が彼氏に送ったのは、ただ一言、「もう別れる」というメールだけ。その後、彼からは怒り狂ったような連絡が何度も入りますが、私たちは一切応答しませんでした。そして、彼からのメッセージが一旦おさまりました。
だが、安堵の息をつく間もなく、彼からの新たなメッセージが届きました。
そこには、私たちの共通の友人である山本君の家の写真が添付されており、「いまからお邪魔します」という言葉が。私たちは声も出ないほど絶句し、慌てて山本君に連絡を取りました。幸い山本君は外出中で家にはおらず、事情を聞いた彼はしばらく家には戻らないことにしてくれました。
電話を切ると1通のメールが届いていました。
画面を見ると彼氏から新たな写真で、開いてみると、そこには玄関ドアが斧のようなもので深く傷つけられている様子が映っていました。そのメールには、「ざんねん」という言葉が添えられていて、恐怖で凍りつきました。
玄関の写真が送られてきてから数分後、またしても彼氏から新たなメッセージが届きます。心臓が跳ねる思いで開くと、今度は美穂のバイト先であるファミリーレストランの写真が表示されました。
「大丈夫、そこなら人がたくさんいるから…」美穂が弱々しく言ったものの、確かめるためにすぐにレストランに電話をかけることにしました。電話に出たのは、バイトリーダーの田中さんでした。
田中さんの声は震えていて、何か大きな問題があったことをすぐに察しました。「実は、少し前に店長が何者かに襲われ、今、救急車で搬送されているんです。犯人はまだ捕まっていません」とのことでした。
その後も、彼は私たちの知り合いの場所を次々と特定しては、その写真を送りつけてきます。そして次に送られてきたのが、美穂が避難している私のアパートの写真でした。「見つけるのは時間の問題だな」との言葉を添えて…。
それから数分後、外から重い足音が聞こえ始めました。ドアがゆっくりとノックされます。しかし、そのノックは次第に激しさを増していき、ついにはドアを叩き壊すかのような音が響き渡りました。美穂は泣き崩れ、私は必死でドアを押さえつけました。
そして、その瞬間、サイレンの音が聞こえてきました。警察が彼を確保してくれました。後になってわかったのは、彼が私たちを追い詰める過程で、既に複数の罪を犯していたこと。追われていた彼は逮捕され、私たちはようやく安堵の息をつくことができました。
こんなこと2度と起こらないと思いますが、人生何があるかわからないものですね。
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