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【怖い話|短編】路地裏の予言者

路地裏の予言者
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路地裏の予言者

広島市の繁華街から少し離れた路地裏に、「余命占い」と書かれた煤けた看板を掲げた古びた長屋があった。薄暗い店内は、古めかしい調度品や不気味な仮面が所狭しと並べられ、得体の知れない雰囲気を漂わせていた。

煤けた看板と不気味な長屋

店主は、痩せ細った体に長い白髪、そして異様な光を放つ目をした老婆だった。その目は、まるでこの世のものではない何かを見通しているようだった。

老婆は、「黒川キク」と名乗り、訪れる客の手相を見るなり、死期を告げるという。その占いは恐ろしいほど正確で、キクのもとを訪れた者は皆、告げられた通りの日に死を迎えたという噂が広まっていた。キクの占い方法は、代々受け継がれてきた秘術で、広島に原爆が投下された際に亡くなった人々の霊が彼女に語りかけるのだという話もあった。

ある蒸し暑い夏の夜、大学生のグループが肝試しとして、キクの長屋を訪れた。リーダー格の拓也、お調子者の翔太、明るいムードメーカーの彩、そして心霊現象に興味津々な麻衣の4人だった。彼らは半信半疑ながらも、好奇心に駆られて長屋の扉を開けた。

肝試しに訪れた大学生たち

薄暗い店内は、線香の香りが立ち込め、不気味な静けさに包まれていた。4人は恐る恐る奥へと進み、キクの前に座った。

キクは、4人をじっと見つめ、一人ずつ手相をじっくりと観察した。そして、不気味な笑みを浮かべながら、それぞれの死期を告げていく。

「あんたは、3日後に海で溺れ死ぬ」

拓也に告げられた言葉に、他の3人は息を呑んだ。

「あんたは、1週間後に病気で死ぬ」

次に翔太に告げられた言葉に、彩と麻衣は顔面蒼白になった。

「あんたは、2週間後に事故で死ぬ」

彩に告げられた言葉に、麻衣は恐怖で震え始めた。

「あんたは、1ヶ月後に自ら命を絶つ」

最後に麻衣に告げられた言葉に、4人は言葉を失った。

死の宣告

キクは、4人の反応を見て満足そうに頷くと、「あんたらの運命は決まっとる。覚悟しときんさい」と言い放った。

4人は恐怖に慄きながら長屋を飛び出し、それぞれ家に帰った。しかし、キクの言葉は彼らの心に深く刻まれ、拭い去ることができなかった。

3日後、拓也は海水浴中に高波にさらわれ、行方不明になった。1週間後、翔太は原因不明の病に倒れ、病院で息を引き取った。2週間後、彩は自転車で走行中に車と衝突し、死亡した。

最後に残った麻衣は、恐怖と絶望から精神を病み、キクの予言通り、1ヶ月後にマンションの屋上から飛び降りて命を絶った。

恐怖の連鎖

キクの長屋は、その後まもなく取り壊され、跡形もなく消え去った。しかし、キクの呪いは今も広島の街に残り、人々の心に恐怖を与え続けているという。

広島市の路地裏には、今もなお、「余命占い」の看板を掲げた長屋が現れるという噂がある。もし、あなたがその長屋を見つけても、決して足を踏み入れてはならない。

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