【怖い話｜短編】ゴールデンウィークでのこと

ゴールデンウィークでのこと

ゴールデンウィークの始まり、佐々木家は特別な旅行を計画していました。

家族は四人で、父の健一、母の真紀、そして高校生の息子・大樹と小学生の娘・花。彼らは都会の喧騒から離れ、大自然が広がるキャンピング施設でのグランピングを楽しみにしていました。この施設は、広大な牧場があり、雄大な景色が楽しめるという、最近人気の穴場スポットです。

車中、家族は旅のワクワク感でいっぱいでした。健一はドライブ中、お気に入りのロック音楽をかけ、真紀はお手製のお弁当を皆に配っていました。大樹は新しいカメラで風景を撮影し、花は窓から見える羊の群れを指さし、はしゃいでいました。一家は笑顔で話し合いながら、目的地に向かっていました。

到着後、家族はまずテントエリアに荷物を置き、施設内を探検することに。子供たちは近くの小川で水遊びを楽しみ、健一はカメラを構えて家族の楽しい様子を撮影していました。真紀は地元の花や野鳥に目を細めながら、家族の笑顔を見ているだけで幸せを感じていました。

昼食は施設が用意するバーベキューセットで、健一が腕を振るってジューシーな肉を焼きました。食事を終えた後、家族は散策を再開。真紀は一日の疲れを癒すために、シャワーを浴びに少し離れた母屋に向かうことにしました。

歩いて母屋に向かう道すがら、真紀は自然の中で深呼吸をしていました。しかし、母屋の裏手を通る際、ふと地面に人の形をした影を見つけました。一瞬、心臓が止まるようなショックを受けて二度見すると、何もないただの地面でした。その瞬間から、真紀はどこからともなく見られているような視線を感じ始めます。

シャワーから戻った真紀は、何となく落ち着かない気持ちを抱えつつも、家族にそのことを話すのをためらいました。夕食時、家族は再び楽しい時間を過ごすものの、真紀の心のどこかには不安が残り続けていました。

その夜、父親の健一は深夜にタバコを吸うため外に出ます。星空の下、ふと目を落とすと、目の前に死体の山が広がっているのが見えました。しかし、目をこすって再び見ると、そこにはただの草むらだけでした。この出来事に混乱しながらも、健一は何も言わずにテントに戻りました。

夜が更けて家族が眠りにつくと、突然ドーム型のテントの窓部分に「バン！」と大きな音が鳴り響きました。慌てて外を見ると、窓ガラスには血まみれの手形が残されていました。この光景に家族全員が恐怖を感じ、一晩中眠ることができませんでした。

翌日、帰路につく車内の空気は重く、帰宅後も家族には次々と不幸が訪れます。健一は職を失い、真紀は体調を崩し、子供たちも学校で困難に直面します。

あのグランピング施設で何が起きたのか、そしてそれがどう家族の運命に影響を与えたのか、佐々木家はただ混乱するばかりでした。彼らの心に残るのは、あの場所で感じた見えない視線と、忘れがたい恐怖の記憶だけでした。