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【怖い話|短編】大雨に消える白い影

大雨に消える白い影
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大雨に消える白い影

私の友人が体験した話です。

彼女はある夏の日、仕事が長引いて帰りが遅くなりました。その日は一日中雨が降り続き、夜になると豪雨となりました。街灯もまばらな田舎道を運転していると、ワイパーが追いつかないほどの激しい雨がフロントガラスを叩きつけ、視界がほとんど遮られていました。

豪雨の夜の運転

前方の車のテールランプすら見えず、道路はまるで川のように水で溢れ、どこが道でどこが水たまりかも判別が難しい状況でした。

その時、不意にヘッドライトの光が道端に人影を捉えました。ずぶ濡れになった白いワンピースを着た女性が、まるで雨に溶け込むように立っていたのです。友人は一瞬、見間違いかと思いましたが、その女性がじっとこちらを見つめているのが分かりました。彼女の髪は顔に貼り付き、目だけが暗闇の中で異様な光を放っているように見えました。こんな夜中に、しかも豪雨の中で立ち尽くしているなんて普通ではないと思い、友人は少し怖さを感じながらも車を停めて声をかけることにしました。

白いワンピースの女性

「こんなところでどうしたんですか?どこまで行かれるんですか?」友人が窓を少し開けて尋ねると、女性は無言でこちらを見つめ続けたままでした。返答がないことに不気味さを覚えた友人は、躊躇しながらも「車に乗ってください」と言いました。すると、女性はゆっくりと車に近づき、友人の開けた後部座席のドアに手をかけました。車内に乗り込んだ瞬間、友人は肌寒い冷気が全身を包むのを感じました。まるで外気が急に冬に変わったかのような冷たさでした。

車内での冷気

女性が座った後部座席をルームミラーで確認しましたが、彼女は相変わらず無言のまま、前を向いているだけでした。その顔がミラー越しに映るたび、友人は何とも言えない不安感に襲われました。何かおかしい、そう思いつつも、友人はアクセルを踏み、車を発進させました。

「どこまでお送りしますか?」再び尋ねましたが、女性はやはり何も答えません。ただ、じっと前方を見つめ続けているだけでした。雨の音が遠く、まるで彼女と友人の間に何か見えない壁があるような感覚でした。友人は背中にじわりと汗が滲むのを感じ、怖くなって再度ルームミラーを見ました。しかし、そこには誰も座っていませんでした。

驚愕して車を急停止させた友人は、慌てて後部座席を振り返りましたが、やはり誰もいません。女性はまるで最初から存在していなかったかのように、跡形もなく消えてしまっていたのです。パニック状態の中で、友人は必死に状況を整理しようとしましたが、説明がつかない不気味さに震えが止まりませんでした。

女性の消失

その後、友人はその道で起きた過去の事故の話を知りました。数年前、同じように大雨の日に、ある女性が交通事故で命を落としたというのです。その女性は白いワンピースを着ていて、事故現場に向かう途中だったと言われています。それ以来、彼女は毎年大雨の日に、同じ場所で目撃されるという噂が広まっていました。

友人はその話を聞いてからというもの、雨の日には決してその道を通らないようになりました。あの夜、彼女が見たのはただの幻覚だったのでしょうか。それとも、本当にこの世に未練を残し、成仏できない霊だったのでしょうか。今でも、友人はあの冷気と視線を思い出すたびに、背筋が凍る思いをするそうです。

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