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【怖い話|短編】深夜の山道に現れた白い影

深夜の山道に現れた白い影
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深夜の山道に現れた白い影

友人の兄が体験した話です。

深夜の山道に現れた白い影

彼は大学を卒業した後、地方の工場に就職しました。工場は山のふもとにあり、周囲には鬱蒼とした森が広がり、夜になると特に薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていました。仕事は主に深夜シフトで、終業後は車で暗い道を走り、自宅に帰るのが日常でした。

山のふもとの工場と薄暗い森

ある晩、彼はいつものように仕事を終え、夜中の2時ごろに工場を出発しました。道はいつものように静かで、周囲に人影はありません。車のヘッドライトが頼りで、かろうじて見えるのは狭い道と、道端に広がる黒い森の影だけでした。彼は疲れていたものの、早く家に帰ろうと少しスピードを上げていました。

その時、ふいに視界の先に白いものが見えました。「ん?」と思った瞬間、彼の目の前に突然白い影が飛び込んできたのです。驚いて急ブレーキを踏むと、車はギリギリで止まりました。フロントガラスの前に立っていたのは、全身白い服を着た女性でした。

夜の山道と白い影

彼は一瞬、動揺で言葉を失いました。女性はまるで現実感がなく、その場に不自然に立っているように見えました。彼は恐怖に駆られ、咄嗟にクラクションを鳴らしましたが、女性は動じることなく、逆にゆっくりと彼に向かって歩み寄ってきました。彼女の長い黒髪が顔を隠しており、表情は全く見えません。何かがおかしい——その不気味さに、彼の全身に鳥肌が立ちました。

彼は慌ててバックギアに入れて車を後退させようとしましたが、車はなぜか全く動かない。エンジンは正常に動いているのに、タイヤが空回りしているような感覚に陥りました。パニックに陥った彼は、アクセルを何度も踏み直しましたが、状況は変わりません。後ろを振り返っても、何も見えず、森の闇が広がるだけ。どこにも逃げ場がないような絶望感に包まれました。

その時、ふとフロントガラスに「ポタッ」と音がしました。彼は驚いて視線を戻し、ガラスを見ると、赤黒い液体がゆっくりと垂れて広がっていました。「血だ……」彼の脳裏に浮かんだのはその言葉でしたが、どうして血が?

動かない車と赤黒い液体

周囲を見回すと、先ほどの女性が車のすぐ近くまで来ていました。顔は依然として見えず、まるで生気のない、影のような存在に思えました。

恐怖が最高潮に達した彼は、無我夢中で再度アクセルを踏み込み、車を揺らしながら強引に動かそうとしました。その瞬間、車が急に動き出し、彼は勢いよく後退しました。ハンドルを切り替え、前進しようとする中、女性の姿がふいに後ろに消えていくのが見えました。

息を切らしながら、その道を一気に走り抜け、自宅まで帰り着いた時には、全身が汗でびっしょりでした。帰宅後も、しばらくはあの光景が頭から離れず、震えが止まりませんでした。翌朝、少し落ち着いた彼は工場の同僚に昨晩の出来事を話しました。しかし、その反応は予想外のものでした。

急に動き出す車と消える白い影

「お前も見たのか……」同僚は重苦しい声で言いました。彼らによると、数年前にその道で若い女性が車にはねられて亡くなったというのです。その事故以来、深夜になると時折その霊が現れるという噂が広がっていたそうです。「あの道は避けた方がいい。特に深夜は……」と、同僚たちは口を揃えて忠告しました。

それ以来、彼はどんなに仕事が遅くなっても、その道を通ることは二度となかったそうです。深夜の山道に潜む白い影――彼の記憶からも、決して消えることはありません。

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