まとめトピックスでは、現在読みたいお話しのジャンルを募集しております。ぜひともお問合せよりご連絡ください。こちらから投稿

【怖い話】変わり始めた家族 後編

変わり始めた家族

中編はこちら

目次

変わり始めた家族 後編

Aと話した後も、私はその違和感を拭い去ることができなかった。

朝の空気は清々しいはずなのに、どこか重苦しい。キャンプ場の周りの木々さえ、不気味な静けさを漂わせているように感じた。彼の家族は相変わらず無口で、ただ食事をするだけ。子供たちは時折、何もない空間に目を向けては、小さな声で何かを呟いているが、その言葉はまるで風にかき消されるかのように聞き取れなかった。

私は強い不安を感じつつも、どこかで「気のせいだ」と自分に言い聞かせようとしていた。しかし、その思いはすぐに打ち砕かれることになる。

食事を終えた後、私はAの家族を誘って、近くの森へと散歩に出かけることにした。

森の中での違和感

少しでも気分転換になれば、Aの家族も元の姿に戻るかもしれない、そんな淡い期待を抱いていた。しかし、森に入ると、子供たちが突然立ち止まり、まるで何かを見つめるように一点を凝視し始めた。

「何かいるのか?」私は不安を抱えながら声をかけたが、子供たちは無反応のままだ。

視線の先にはただ木々が広がるだけで、そこに何か特別なものがあるわけではなかった。しかし、Aの子供たちは異様なまでにその方向を見つめ続けていた。

「戻ろう。」私は何か嫌な予感がして、Aに提案した。

だが、その時だった。木々の間から黒い影がゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

黒い影の出現

最初はただの錯覚かと思ったが、次第にその影が明確になっていく。それは人間のように見えたが、何かが違っていた。影は不自然に歪んでいて、まるでこの世界のものではないように感じた。

「おい、見えるか?」私はAに声をかけたが、彼はただ黙ってその影を見つめていた。まるで何かに引き寄せられるかのように、Aは一歩、また一歩と影の方へ歩みを進めた。

「ダメだ!」私は慌ててAの腕を掴もうとしたが、その瞬間、Aの妻が突然、狂ったように笑い出した。彼女の笑い声は不気味で、響き渡るような音を立てた。子供たちも同じように笑い出し、その場の空気が急に異様に重くなった。

私は何が起きているのか理解できず、ただ恐怖に震えていた。次の瞬間、Aの家族は全員が一斉に森の奥へと走り出した。彼らの動きは異常に速く、私の追いつくことができないほどだった。

家族の狂気と祠への誘導

私は慌てて追いかけたが、途中で足を止めざるを得なかった。森の奥に、古びた祠が見えたのだ。それは明らかに異様な雰囲気を放っていた。祠の前で、彼の家族は全員が無表情のまま立っていた。Aの妻が祠の中に何かを投げ入れると、森全体が不気味な音を立てて揺れたように感じた。

突然、祠から黒い霧のようなものが湧き上がり、Aの家族を包み込んだ。

黒い霧に包まれる家族

私は必死に彼らを呼び止めようとしたが、その声は何も届かず、彼らは霧の中へと消えていった。Aの家族は完全に姿を消し、祠もまるで最初から存在しなかったかのように消え失せていた。

私はその場に立ち尽くし、何が起きたのか理解できないまま、ただ恐怖に打ち震えていた。

後に警察に報告したが、Aの家族は見つからなかった。そしてあの祠も、どこにも見当たらなかった。何かがこの森には潜んでいた――それだけは確かだった。

私は二度と、その森に足を踏み入れることはないだろう。


Feature

特集カテゴリー

変わり始めた家族

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次