【洒落怖】霧に沈む人形館
薄暗い霧に包まれた山間部、ひっそりと佇む木造建築。かつては子供たちの歓声が響いた人形館も、今は朽ち果て、静寂に支配されていた。
A子とB男は、好奇心と少しの不安を胸に、その扉を開けた。
一歩足を踏み入れると、埃の匂いと湿った空気が鼻腔を刺激する。薄暗い館内には、無数のガラスケースが並び、中には様々な人形が鎮座していた。壊れた笑顔、虚ろな瞳、どこか不気味な雰囲気を醸し出す人形たちは、まるでA子たちを嘲笑っているかのようだった。
奥へと進むにつれ、異様な光景が目に飛び込んでくる。床に散乱した人形の欠片、壁に描かれた奇妙な模様、そして血のように赤い液体で染められた床板。
A子は恐怖に震えながら、それでも一歩ずつ前進していく。B男はA子を支えつつ、周囲を警戒していた。
二人がたどり着いたのは、広々としたホールだった。中央には巨大な木製の椅子が置かれ、その周りには数十体の人形が円形に並べられている。まるで儀式でも行われるような不気味な雰囲気だ。
A子が思わず近づいた瞬間、背後から物音が聞こえた。振り返ると、B男がいない。辺りを見渡しても、彼の姿はどこにも見当たらない。
「B男…?!」
A子は恐怖に声を絞り出す。しかし、返事はない。
突然、館内が激しい揺れに襲われた。天井から埃が降り注ぎ、ガラスケースが音を立てて割れる。
A子は恐怖で立ち尽くすしかなかった。
その時、背後から声が聞こえた。
「ようこそ、人形館へ…」
振り返ると、そこには血まみれの少女人形が立っていた。壊れた瞳でA子を見つめ、不気味な笑みを浮かべる。
「あなた…誰…?!」
A子は恐怖で声も震える。
「私は…この館の…主人…あなたを…ずっと…待っていた…」
人形はゆっくりとA子に近づいてくる。
「逃げて…!!」
A子は恐怖で叫び、後ろを振り向いて走り出した。しかし、足元が崩れ、A子は深い穴に落ちてしまった。
暗闇の中、A子は助けを求めて叫んだ。
「誰か…助けて…!!」
しかし、彼女の叫び声は虚しく、霧に消えていく。
翌朝、山間部でA子の遺体が発見された。B男の姿は依然として分からず、人形館は再び静寂に包まれた。
A子の死因は不明のまま。彼女の身に何が起こったのか、誰も知ることはなかった。
霧に沈む人形館は、今日もなお、恐ろしい秘密を語り継いでいる。
コメント