桜の下で
小さな町の端に住む少年ユウタは、祖母のケイコと二人暮らしでした。
ケイコはユウタにとって母のような存在。
彼女はいつもユウタに、彼の亡き母のことや、美しい桜の木の下での思い出を語ってくれました。
ユウタの母は彼が生まれたばかりのときに亡くなり、彼女が残したのは一枚の写真と、桜の木の下に埋めたタイムカプセルだけでした。
ケイコは毎年、桜が咲く季節になるとユウタを連れてその木の下へ行き、母の思い出を語り継いでいました。
ユウタが高校を卒業する年の春、ケイコは病に倒れました。
彼女の最後の願いは、もう一度桜の木の下でユウタと時間を過ごすことでした。
桜の季節が来ると、ユウタは車椅子にケイコを乗せ、ゆっくりと桜の木の下へと向かいました。
到着すると、ユウタはケイコに手渡された小さな鍬で、桜の木の根元を掘り始めました。
そこには、ユウタが生まれた年に埋められたタイムカプセルがありました。
中にはユウタの母から彼に宛てた手紙が入っていました。涙を流しながら読むと、そこには愛情溢れる言葉と、未来への願いが綴られていました。
ケイコは微笑みながらユウタに語りました。
「君の母はいつも君のことを考えていたのよ。そして、私もずっと君のそばにいるわ。」
その時、ユウタは初めて、家族の絆の深さを心の底から感じました。
夕暮れ時、桜の花びらが舞い落ちる中、ユウタは祖母と母から受け継がれた愛を感じ、新たな人生の歩みを始める決意を固めました。
彼にとって、桜の木の下は、これからも大切な場所となるのでした。
コメント