【洒落怖】人を喰う家
最近、私たちの住む町では不可解な火事が頻発していた。ニュースでは連日のようにその報道がなされ、町の人々の間では物騒な話題で持ちきりだった。私たち家族にとっても、その話題は避けられないものとなっていた。
「また火事だってさ。今度はどこの家だろう?」嫁が朝食を準備しながら言った。
「気を付けないとね。子供たちも、火遊びは絶対にダメだよ」と私は忠告した。子供たちは真剣な表情で頷いた。
そんなある日、私たちは山の中腹にぽつんと建つ古い家を買い、都会の喧騒から逃れることにした。家は古風でありながらも、何故か心地よい既視感があった。しかし、その心地よさも束の間、家に引っ越してから奇妙な出来事が起こり始めた。
夜な夜な聞こえる物音、動くはずのない物の移動、そして家族全員が感じ取る不快な視線。日に日に現象はエスカレートし、家の中で不穏な気配が漂うようになった。
「パパ、夜中に誰かが部屋にいる気がする…」子供たちが恐怖を抱えて言った。嫁もまた、家の中で何かを感じ取っているようだった。
そして、ある夜のこと、私は家の中を歩いていると床が突然抜け、暗闇に落ちた。硬い床に叩きつけられた私は、自分が家の地下にある広い部屋にいることに気が付いた。壁には奇妙な文字が書かれ、中央には大きな石のテーブルと、その周りに散乱する骨。恐怖で身体が硬直する中、家の歴史を物語る声が聞こえてきた。
「この家は、かつて人を喰う儀式が行われていた場所だ。お前たちも、この家の一部となる運命だ。」
声が終わると同時に壁が動き、出口が現れた。私は必死でその場を逃れ、家族のもとへ戻った。その日を境に、私たちは家を離れた。
しかし、家を離れて間もなく、私たちが住んでいた家は放火に遭い、全焼した。ニュースでその様子を見たとき、私たちはただただ呆然とするしかなかった。
火事の後、瓦礫の撤去作業が行われた際、作業員たちは地面に不自然な凹みを見つけた。掘り進めると、そこからは白骨化した多数の遺体が発見された。それらは、おそらくかつてその家で行われていた儀式の犠牲者たちだったのだろう。
その知らせを聞いたとき、私たちは深い悲しみと共に、あの家との縁がようやく終わったことを感じた。しかし、同時に、私たちが体験した恐怖が、単なる偶然や想像の産物ではなかったことを悟った。
私たち家族は今、新しい生活を送っている。しかし、あの家での出来事は、私たちの記憶から決して消えることはない。それは、私たちにとって忘れられない恐怖の体験であり、同時に警鐘であった。家を選ぶとき、その歴史を知ることの重要性を、私たちは痛感したのだから。
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