【洒落怖】願いを叶える代償
私がその古いノートを見つけたのは、雨が降りしきるある日のことだった。
古書店の隅にひっそりと置かれていたそれは、何故か私を強く引きつけた。表紙には不思議な模様が描かれ、ページは黄ばんでいたが、触れると不思議と温かみを感じさせる。店主はこのノートについて何も知らないと言った。
家に帰り、ページをめくると、「あなたの願いを叶えます」と書かれていた。半信半疑で、私は小さな願いを書き込んだ。翌日、信じられないことに、その願いが現実になっていた。このノートが本当に願いを叶えるのなら、と私の心は躍った。
次第に私の願いは大きくなり、それが現実になるたびに、私はこのノートの力を信じるようになった。しかし、願いが叶うごとに、周りの環境が少しずつ変わっていくことに気づき始めた。友人との関係が急に悪化したり、健康に些細な問題が起きたり。
最初は偶然だと思っていたが、ノートに書く願いが叶えられるたびに、私の人生に小さな不幸が訪れるようになった。それでも、ノートの魔力には抗えず、さらに大きな願いを書き続けた。
ある日、私は自分が真に望んでいるもの、人生を根底から変えるような大きな願いをノートに書き込んだ。
それが叶った瞬間、私の人生は完全に一変した。しかし、その代償は想像を絶するものだった。最愛の人を失い、自分自身も重大な病に侵されていることがわかった。願いが叶うたびに、私は大切なものを失っていたのだ。
このノートは願いを叶えるが、その代償として使用者の幸福を奪う、呪われたアイテムだったのだ。
願いを叶える力を手に入れたことの喜びは、すべての不幸によって消え去った。
このノートがもたらす真実に気づいた時、私はすでに多くを失っていた。私はノートを遠く離れた場所に捨て、二度と誰の手にも渡らないように願った。しかし、失われたものを取り戻すことはできない。
私の物語は、欲望の追求がもたらす危険性と、その代償についての警告の話である。願いが叶う力を得たとしても、それが本当の幸福をもたらすとは限らない。
真の幸福は、自分の中に、そして周りの人々との関係の中に見出すものだと、私は今では深く理解している。
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