【後味の悪い話】喋る牛
かつて、ある農場には特別な牛がいた。この牛はなんと話すことができた。農場主のトムは、初めて牛が話しかけてきたとき、驚きと興奮で夜も眠れなかった。牛はトムに名前を教え、「モー」と呼ばれることになった。
モーは賢く、トムとの会話で日々を楽しく過ごした。農場の他の動物たちとも仲良くし、まるで家族のように暮らしていた。トムはモーを特別扱いし、他の牛たちとは違う生活をさせていた。
しかし、ある日、農場の経済状況が悪化した。トムは苦渋の決断を迫られた。食肉市場で話す牛は高値で売れると聞き、彼はモーを市場に出すことを決めた。モーはトムに「なぜ?」と尋ねたが、トムは答えられなかった。
市場で売られる直前、モーはトムの目をじっと見つめ、静かに言った。「トム、僕はいつも君のことを友だちだと思っていたよ。どうして?」その言葉には混乱と裏切られた感情が込められていた。
市場では、モーの特異な能力が注目を集めた。高値で落札された後、モーは解体され、肉として売られた。トムはモーの最後を見届けられず、ただ遠くから涙を流した。
モーの肉は珍味として評判になり、多くの人々がその味を賞味した。しかし、彼らはモーが持っていた特別な能力や、トムとの絆の深さを知らなかった。
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