【後味の悪い話】消えた笑顔
田舎町に住む少年トムは、いつも元気で人懐っこい子でした。
彼は町の皆から愛されており、その明るい笑顔で周囲を照らしていました。
しかし、彼には心に秘めた悲しみがありました。
彼の母親は病気で、日に日に弱っていっていました。
トムは母親を助けるために、小さな奇跡を信じていました。
彼は毎日、近くの古い井戸に小さな願い事をしては、コインを投げ入れていました。
「ママが元気になりますように」という願いでした。
ある日、トムの母親の病状が急変しました。
トムは慌てて井戸に駆け寄り、これまでで一番大きな願いをしました。
しかし、その夜、母親は静かに息を引き取りました。
母親の葬儀の日、町の人々はトムに深い同情を寄せました。
しかし、トムは何も言わず、ただ黙って井戸の方を見つめていました。
その日以来、彼の明るい笑顔は二度と町で見ることはありませんでした。
数年後、その井戸が埋め立てられることになり、工事の過程で何百ものコインが発見されました。
それらはすべてトムが投げ入れたものでした。
トムの願いは、ただの迷信に過ぎなかったのです。
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