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【怖い話|短編】揺らぎ

揺らぎ
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揺らぎ

ある日、大学の友人から僕に奇妙な話をしてきた。

彼はネットの深い闇に潜むようなサイトで「呪いの曲」と呼ばれる音楽ファイルを見つけたという。その曲は、聴いた者に不幸が訪れるという噂が広まり、再生された回数も少なく、コメント欄には「絶対に聴くな」と警告する書き込みばかりだった。

呪いの曲を発見

しかし、好奇心旺盛な彼は「そんなの作り話だろう」と笑い飛ばし、その曲をダウンロードして聴いてみた。

「ただの古びたピアノの曲だったよ。特に不気味なところもなかったし、何も感じなかった。」そう言いながら、彼は肩をすくめた。しかし、その話を聞いた瞬間、僕の背筋に嫌な寒気が走った。彼の表情がどこかおかしい。無理に平静を装っているような違和感があったのだ。

その夜、彼の家で異変が起こり始めた。深夜2時過ぎ、突然電話が鳴り響いた。

奇妙な電話

彼は寝ぼけながらも電話を取り、耳に当てたが、相手は無言だった。ただ、遠くで誰かがピアノを弾いているような音が微かに聞こえたという。そのメロディは、まさに昼間彼が聴いた「呪いの曲」と同じだった。

電話を切った後も、彼の部屋は異常な静寂に包まれていた。

しかし、窓の外からは風の音も聞こえず、まるで時間が止まったかのような異様な雰囲気が漂っていたという。やがて、部屋の電気が一斉に消えた。彼は闇の中で、かすかな足音を聞いた。明らかに彼以外の誰かが家の中を歩いている。その音は、彼の寝室に近づいてきていた。

震える手で懐中電灯を探し当て、灯りをつけた彼はリビングに向かおうとした。しかし、その瞬間、目の前の古い振り子時計が突然狂ったように揺れ出し、針が高速で回転し始めた。

異変の始まり

その音はまるで時計が悲鳴をあげているかのように不気味だった。そして、その揺れる時計の隙間から何かが覗いているように見えた。暗がりの中で、何か黒い影がうごめいていたのだ。

彼は恐怖で足がすくみ、動けなかった。そしてその瞬間、耳元で低く不気味な声が囁いた。「もう遅い…」彼は叫び声をあげ、部屋を飛び出した。

翌日、彼は学校に来ていなかった。連絡も取れず、心配になった僕は彼の家を訪れることにした。彼の家の扉は開いており、まるで何事もなかったかのように静まり返っていた。しかし、リビングに入ると、異様な空気が漂っていることに気づいた。全てが無機質に感じられ、家全体が冷たく感じられたのだ。

友人の失踪

そして、彼のパソコンが開きっぱなしになっており、画面にはあの呪われた曲の再生画面が表示されていた。

椅子の上には彼の姿はなく、家中を探しても彼は見つからなかった。まるで蒸発したかのように、彼は完全に消えてしまっていた。彼の家族に連絡すると、彼が夜中に家を出たきり、戻ってきていないという。

それから数日が経ち、僕も奇妙なことを感じ始めた。夜中、寝ていると、何度も頭の中であのメロディが響くようになったのだ。最初は微かだったが、次第にその音は大きくなり、眠ることができなくなった。そして、耳の奥に感じるかすかな囁き声が、日に日に鮮明になっていった。

迫り来る呪い

「もう遅い…」

あの日、僕も一瞬だけ彼と一緒にその曲を聴いてしまった。最初は彼の話を軽く聞き流していたが、今では後悔している。この呪いが本物だという確信が、日に日に強まっている。次は、僕が消える番なのかもしれない。

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