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【怖い話|短編】友人とバイク

友人とバイク
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友人とバイク

9月のある日、僕の親友がバイク事故で突然この世を去った。彼は高校に入学してからバイクに夢中になり、夏休みが終わると同時に手に入れたばかりの新しいバイクで毎日のように街中を走り回っていた。僕らはいつも放課後に集まり、よくツーリングに出かけることが多かった。事故が起きた日も、放課後に一緒にツーリングに行く約束をしていたんだ。だけど、約束の時間になっても彼は来なかった。

親友のバイク事故

心配になってスマホをチェックすると、街のはずれでバイク事故があったというニュースが目に飛び込んできた。まさか、と思いながらも胸騒ぎが止まらなかった。しばらくして彼の家族から電話があり、彼が事故で亡くなったと知らされた。事故の原因は、雨で滑りやすくなった道路でバイクがスリップし、対向車に衝突してしまったというものだった。

葬式の後も、僕は彼がいなくなったという実感が湧かなかった。学校に行けば、いつものように彼が教室のドアを開けてくるんじゃないかと思ってしまう。彼の机が空いているのを見て、ようやく現実を少しずつ受け入れ始めた矢先のことだった。

事故から1週間ほど経った夜、突然スマホが震えた。画面を見ると、そこには彼の名前が表示されていた。「準備できた?もうすぐ行くから」と、彼からメッセージが届いていた。僕はその場で固まった。彼の事故以来、彼の携帯は警察に回収され、家族もまだ返してもらっていないはずだった。それなのに、どうして…?僕は恐る恐るメッセージを無視しようと決めた。

不可解なメッセージ

それから数日、彼からのメッセージは続いた。「今、バイクで向かってるよ」「家の前にいるよ」「早く出てきて、一緒に行こう」。まるで僕たちがまだツーリングの約束をしているかのように、彼は僕を誘い続けていた。最初はただのエラーか何かだと思っていたが、彼のメッセージが増えるたびに、得体の知れない恐怖が心の中に広がっていった。

そしてある夜、ついにその恐怖が現実のものとなった。僕が布団に入って寝ようとしていた時、家の外からバイクのエンジン音が響いた。それは間違いなく、彼が乗っていたバイクの音だった。エンジンの低い音が、静かな夜に不気味に響いていた。まさかと思い、窓のカーテンを少しだけ開けて外を覗くと、彼のバイクが家の前に止まっているのが見えた。運転席にはヘルメットをかぶった彼が座っていた。

バイクのエンジン音

僕は一瞬で凍りついた。彼はゆっくりとこちらを向き、ヘルメットの奥からまっすぐ僕を見つめているように感じた。僕は慌ててカーテンを閉め、ベッドに飛び込んだ。心臓が激しく鼓動し、耳の中でバイクの音がまだ鳴り響いている気がした。

「早く来いよ…待ってるから…」

そんな声が聞こえた気がしたが、怖くて確かめる勇気はなかった。次の日の朝、バイクも彼も跡形もなく消えていた。外にはタイヤの痕跡すら残っていなかった。それからというもの、彼からのメッセージは途絶えたが、時折、9月の冷たい風が吹くたびに、彼のバイクの音が遠くから聞こえてくる気がしてならない。

恐怖が続く

僕はもう二度と彼の名前を口にすることができなかった。彼が僕を迎えに来ようとしていたのか、それとも何か別の存在が彼に成り代わっていたのか。それは今でもわからない。ただ一つ言えるのは、あの9月の夜以来、僕は彼のバイクの音が聞こえるたびに、二度と忘れることのできない恐怖に襲われ続けているということだ。

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