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【怖い話|短編】膨ればばぁ

膨ればばぁ
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膨ればばぁ

この話は、私が友人から聞いた本当にあった出来事です。田舎の小さな村で育った彼が、子供の頃に体験した、村に伝わる「膨ればばぁ」という妖怪に関する恐怖の話です。

村の風景と神社の森

その村では、古くから「膨ればばぁ」という奇妙な存在の噂がありました。膨ればばぁは、夜になると村の外れにある神社の森を徘徊し、人間に出会うとその体をどんどん膨らませて破裂させるという恐ろしい妖怪です。特に子供に目をつけるとされ、親たちは夜遅く外に出ることを厳しく禁じていました。村では、毎年のように子供や若者が突然姿を消すことがあり、その原因は「膨ればばぁ」だと囁かれていたのです。

友人が小学5年生の時の夏休み、夜になると彼と兄は家の前で花火を楽しんでいました。暗闇の中、鮮やかに咲く花火を見上げながら、兄がふと「膨ればばぁって本当にいるのかな?」と冗談半分に言い出しました。友人はその話題が不気味で気が進みませんでしたが、兄に促され、二人で肝試しをしに神社まで行くことに決めました。

兄弟が肝試しに出発

村の神社は小さな祠(ほこら)があるだけで、夜は周囲が真っ暗になります。懐中電灯を持って森の中を進むと、木々がざわざわと揺れる音がします。風もほとんど吹いていないのに、葉の音だけが妙に大きく聞こえ、どこからともなく冷たい空気が漂ってきました。突然、友人は背後で何かが動く気配を感じました。振り返ると、木の間から小さな白い影がちらりと見えたのです。

「誰だ…?」そうささやくような声が耳元で聞こえ、友人はその場で凍りつきました。しかし、兄は怖がるどころか、「お前、ビビりすぎだろ」と笑いながら、どんどん奥へ進んで行きます。兄の後を追おうと一歩を踏み出した瞬間、道の前方に何かが現れました。月明かりに照らされてぼんやりと浮かび上がるその姿は、異様に膨れた人影でした。

膨ればばぁの出現

膨ればばぁ――友人はその瞬間、村の言い伝えを思い出し、全身が震えました。膨れた人影は、まるで風船のように大きく膨らんだ顔と体を持ち、その皮膚は不自然に引きつり、目だけがぎょろりと動いているのがわかります。兄が声を震わせながら「膨ればばぁだ…!」と叫んだとき、その妖怪はじりじりと兄に近づき始めました。友人は恐怖で足がすくみ、動けなくなりました。

膨ればばぁが兄の前に立ち止まると、兄の体が少しずつ膨らんでいくのが見えました。まるで彼の体そのものが膨ればばぁの影響を受けて膨張していくかのようでした。兄の顔は恐怖に歪み、口を開けて助けを求めるような声を上げましたが、すでに彼の体は異様なほど膨れ上がり、服は裂けそうになっていました。

川辺で発見された兄

友人はその光景を見て我に返り、兄を置いて一目散に家へ逃げ帰りました。息を切らしながら家に着くと、泣きながら両親に話しました。すぐに父親が神社へ向かいましたが、兄はどこにも見つかりませんでした。翌朝、村中で捜索が行われましたが、兄の行方は知れないままでした。

数日後、村外れの川辺で兄は発見されました。しかし、兄の体は異様なほど膨れ上がっており、まるで膨ればばぁの仕業そのものだったのです。兄が何を見て、どうしてそんな状態で発見されたのか、いまだに誰も説明できません。

村ではその後も膨ればばぁの噂が絶えず、誰かが夜にその姿を見たという話が出るたび、人々は恐怖に震えました。友人も、今では決して夜の神社には近づかないと言います。「膨ればばぁは本当にいるんだ」と、彼は今でも信じて疑いません。

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