灼熱の太陽が容赦なく照りつけるエジプトの砂漠。ギーザのピラミッド群から遠く離れた、未踏の地を発掘調査隊が進んでいく。汗と砂埃にまみれながらも、彼らは歴史の闇に埋もれた古代の秘密を解き明かすことに胸を躍らせていた。数週間の過酷な作業の後、ついに彼らの執念が報われる時が来た。
地中深くから現れたのは、これまで見たこともないほど厳重に封印された石棺だった。幾重にも施された封印と、不気味なほどに静まり返ったその佇まいに、調査隊員たちは思わず息を呑んだ。古代エジプトの栄華を物語る豪華な装飾品の数々とは裏腹に、この石棺からは得体の知れない恐怖が漂っていた。
石棺を慎重に運び出し、カイロ博物館に移送する準備が進められた。
しかし、その道中、突如として不気味な砂嵐が発生。トラックが横転し、石棺が激しく地面に叩きつけられた。轟音と共に石棺の封印が破れ、数千年もの間眠り続けていたファラオのミイラが再びこの世に姿を現した。
しかし、ミイラは動かなかった。ただ、虚ろな瞳で虚空を見つめているだけだった。調査隊員たちは安堵したが、その直後から、不可解な現象が始まった。
数日後、博物館の館長が不可解な死を遂げる。死因は不明、ただ、その表情は恐怖に歪んでいた。監視カメラには、誰もいないはずの真夜中の展示室で、館長の顔が青ざめ、何かを見つめる姿が映っていた。その後も、ミイラに関わった人々が次々と謎の死を遂げていく。ある者は睡眠中に心臓が停止し、ある者は原因不明の病に倒れ、そしてある者は精神を病み、自ら命を絶った。
人々は恐怖に震えた。ファラオの呪いではなく、何かもっと恐ろしい、深淵を覗き込むような恐怖だった。古代エジプトの神秘と、現代科学では説明できない超常現象が交錯する中、人々は為す術もなく死の影に怯える日々を送っていた。
ついに、政府はミイラを再び封印することを決断した。
厳重な警備の中、ミイラは再び石棺に納められ、幾重にも封印が施された。そして、人々の記憶から、その存在は徐々に忘れ去られていった。
しかし、今でも、カイロ博物館の地下深くには、厳重に封印された石棺が眠っている。
そして、その中には、虚ろな瞳で虚空を見つめるファラオのミイラが、再び目覚める時を静かに待っているのかもしれない。
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