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【怖い話|短編】石灯籠の幽霊

石灯籠の幽霊
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石灯籠の幽霊

お盆の夜、奈央は毎年恒例のように祖母の家を訪れていた。古びた日本家屋は、幼い頃から夏の帰省の思い出が詰まった場所であり、都会の喧騒から離れて静かな時を過ごすには最適だった。しかし、今年の夏はいつもとは何かが違うと、奈央は到着早々に感じ取っていた。

田舎の祖母の家

庭に生い茂る木々が風に揺れる音、そして屋内に漂う湿った空気に、不気味な違和感があった。

夕食後、祖母と一緒に過ごしていた居間で、奈央はふと庭に目を向けた。夜の静寂の中、庭の一角にある古びた石灯籠が、淡い月明かりに照らされてぼんやりと浮かび上がっていた。奈央はその灯籠がいつからそこにあったのかを思い出せなかった。子供の頃から見ていたはずなのに、今夜は妙にその存在感が大きく感じられた。

石灯籠の謎

「おばあちゃん、この灯籠はいつからここにあるの?」奈央は不意に尋ねた。祖母はしばらく考え込み、静かに答えた。

「あれはね、おじいちゃんが亡くなる前に、ここに置いたものなんだよ。でも、奈央、覚えておきなさい。お盆の夜にはあまり近づかない方がいい。特にあの灯籠にはね。」

祖母の言葉に胸騒ぎを覚えた奈央は、その後も灯籠のことが気になって仕方がなかった。夜更け、布団に入っても寝付けず、再び窓から庭を見下ろすと、そこには驚くべき光景が広がっていた。

石灯籠がぼんやりとした青白い光を放っており、その光の中に女性の姿が浮かび上がっていたのだ。彼女は白い着物をまとい、長い黒髪が風になびいていた。その姿は、まるでこの世のものではないような、不気味な雰囲気を纏っていた。

女性の霊の出現

奈央は恐怖に凍りつき、声を上げることもできずにその場に立ち尽くしていた。女性はゆっくりと奈央の方に顔を向け、その目は深い悲しみと怒りで満ちていた。奈央はその視線に釘付けになり、心臓が激しく鼓動しているのを感じた。何かを伝えようとしているかのようなその目から、奈央は逃れることができなかった。

その瞬間、奈央は突然目を覚ました。汗が額を伝い、心臓はまだ激しく鼓動していた。まるで現実のような悪夢だったが、体の震えが止まらない。意を決して再び窓の外を見ると、庭には何も変わらない静寂が広がっていた。灯籠は静かに佇んでおり、光も女性の姿も見えなかった。

翌朝、奈央は昨夜の出来事を祖母に話した。祖母は静かに奈央の話を聞き終えると、ゆっくりと口を開いた。

「おそらく、あの女性はずっとここにいるのかもしれないね。おじいちゃんが亡くなったあの時から…。」

その言葉に奈央は背筋が凍る思いをした。祖母の話によれば、その女性はかつてこの土地に縛られて亡くなった霊であり、祖父がその存在に気づき供養のために灯籠を置いたのだという。

朝の静寂と祖母の告白

お盆の夜には、霊たちがこの世に戻ってくる。そして、彼らは時に人々に何かを伝えようとする。その何かが、決して迎えたくないものであったとしても。奈央は二度とその庭に近づかないと心に誓った。それ以来、奈央は田舎の夜に潜む不気味な気配を忘れることができなくなった。

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