地下鉄のメッセージ
美紗子は大学の友人たちと夜遅くまで飲み明かし、深夜の地下鉄に乗ることになった。終電に間に合うように駅に駆け込むと、ホームにはほとんど人がいなかった。静寂の中、遠くから電車の走る音が響いてくる。都会の夜は静まり返り、駅の照明が冷たく光を放っていた。
やがて電車が到着し、美紗子は無人の車両に乗り込んだ。座席に座り、窓の外の暗闇を見つめていると、不意に携帯電話が震えた。見知らぬ番号からのメッセージだった。
「次の駅で降りて」
美紗子は不審に思いながらも、好奇心に駆られてメッセージを無視して続きを読んだ。メッセージは続けてこう書かれていた。
「次の駅で降りないと、危険な目に遭う」
不安に駆られた美紗子は周囲を見渡したが、車両には他に誰もいなかった。窓には自分の顔がぼんやりと映っていた。駅に到着すると、美紗子は急いで降りることに決めた。駅のホームに降り立つと、静まり返った空間に不気味な空気が漂っていた。
駅の壁には古びたポスターが貼られており、誰もいないベンチが並んでいた。美紗子は携帯電話を片手に持ち、不安そうに周囲を見渡した。
その時、遠くの方からゆっくりと足音が近づいてくるのが聞こえた。美紗子は恐怖に駆られながらも、足音の方へと視線を向けた。すると、闇の中から現れたのは、ぼんやりとした人影だった。その影はゆっくりと美紗子に近づいてくる。
「逃げて」
再び携帯電話が震えた。美紗子はそのメッセージを見て、全身が凍りついた。急いで出口に向かおうとしたが、足はなかなか動かなかった。影はどんどん近づいてくる。美紗子は必死に走り出し、駅の出口にたどり着いたが、扉は閉まっていた。
絶望的な気持ちで振り返ると、影はもう目の前に迫っていた。美紗子は叫び声を上げたが、誰も助けには来なかった。その瞬間、影が美紗子に触れた。
翌朝、美紗子の姿はどこにも見つからなかった。地下鉄の駅で彼女のバッグだけが発見された。
彼女の携帯電話には、最後のメッセージが表示されていた。
「次の駅で降りて」
それ以来、その駅では深夜になると不思議な現象が起こると言われている。ホームには見えない何かがいる。次の駅で降りるべきだと、警告する声が聞こえてくるのだ。都会の夜には、思いもよらない恐怖が潜んでいるかもしれない。深夜の地下鉄に乗る際は、何かが見守っているかのように感じることがあるかもしれない。
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