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【怖い話|短編】13番線への招待

13番線への招待
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13番線への招待

新宿駅は、言わずと知れた世界最大の乗降客数を誇る巨大ターミナル駅だ。無数の路線が乗り入れ、毎日何百万人もの人々が行き交うこの駅には、しかし、決して公にされることのない秘密があるという。それは、終電後の深夜にだけ現れるという「消えた新宿駅の幽霊」の噂だ。

消えた13番線

ある年の蒸し暑い夏の夜、広告代理店で働く若手社員が、連日の残業で疲れ果て、終電を逃してしまった。人気のないホームで一人途方に暮れていると、どこからともなく聞こえてくるアナウンス。「まもなく、13番線に電車がまいります」。不思議に思った社員が目を凝らすと、暗闇の中から、見慣れない古びた電車がゆっくりと姿を現した。

その電車は、まるで昭和初期の映画に出てくるようなレトロなデザインで、鈍い光を放つヘッドライトが不気味な雰囲気を醸し出していた。恐る恐るその電車に乗り込むと、車内は薄暗く、古びた革張りのシートが並ぶ。乗客はまばらで、皆、懐かしそうな服装をしている。社員は、空いている席に座り、緊張で手に汗を握った。

昭和へのタイムスリップ

電車は発車し、新宿駅を出発した。しかし、車窓から見える景色は、現在の新宿とは全く異なる、古き良き時代の街並みだった。ネオンサインはなく、代わりにガス灯が街路を照らし、木造の建物が軒を連ねている。社員は、まるでタイムスリップしたかのような錯覚に陥った。

しばらくすると、電車はいつの間にか、見知らぬ駅に到着した。降りてみると、そこは、薄暗いプラットホームが広がり、古びた木製の駅名標には「旧新宿駅」と書かれている。周囲を見渡しても、出口は見当たらない。社員は、不安と好奇心が入り混じった複雑な感情を抱きながら、駅構内を歩き回った。

旧新宿駅、そして消失

すると、古びた切符売り場で、一枚の古い切符を見つけた。それは、「旧新宿駅」から「現新宿駅」行きの切符だった。社員は、その切符を手に取り、再び電車に乗り込もうとするが、電車はすでに消えていた。

社員は、夜が明けるまで、人気のない「旧新宿駅」で一人彷徨い続けた。そして、朝になって駅員に発見された時、彼は、昨晩の出来事を必死に説明するが、駅員は信じようとしない。駅構内をくまなく探しても、「13番線」も「旧新宿駅」も存在しなかったのだ。

都市伝説の真相は?

この奇妙な体験をした社員は、その後、精神を病んで会社を辞め、行方不明になってしまった。そして、この話は、都市伝説として、人々の間で密かに語り継がれるようになった。

消えた新宿駅の幽霊。それは、今もなお、深夜の新宿駅を彷徨い続けているのかもしれない。そして、もしもあなたが終電を逃し、人気のないホームで一人になった時、もしかしたら、あなたも13番線への招待を受けることになるかもしれない。そして、その切符を受け取った時、あなたは、二度と現代に戻れないかもしれないのだ。

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