エターナル・ナイトメア
薄汚れたアパートの一室で、フリーターのユウキは現実逃避の手段を常に探していた。仕事も人間関係もうまくいかず、孤独と虚無感に苛まれる日々。そんなある日、彼はダークウェブで見つけたVRホラーゲーム「エターナル・ナイトメア」に心を奪われる。
このゲームは、プレイヤーの深層心理を読み取り、最も恐れるものを具現化し、永遠に悪夢の世界に閉じ込めるという噂があった。好奇心と自暴自棄な気持ちから、ユウキは禁断のゲームを起動する。
VRゴーグルを装着した瞬間、ユウキは朽ち果てた精神病院にワープする。薄暗い廊下には血痕が飛び散り、不気味な笑い声が響き渡る。ユウキは幼少期のトラウマである、病院での孤独な入院生活を追体験させられる。点滴の針、白衣の医師、そして母親のすすり泣く声が、彼の記憶を呼び覚ます。
ゲームを進めるにつれ、ユウキの恐怖は増幅していく。暗闇から現れる血まみれの看護師、手術台に横たわる無残な姿の患者たち、そして何よりも恐ろしいのは、ユウキ自身の心の闇が具現化した化け物だった。それは、ユウキの罪悪感、後悔、そして自責の念を形にした、醜く恐ろしい姿をしていた。
現実世界とゲームの世界の境界線は崩壊し、ユウキの部屋は病院の悪臭と悲鳴に満ちた空間に変貌する。鏡に映る自分の姿は、日に日にやつれ、顔色は土気色になっていく。ユウキは精神的に追い詰められ、孤独と恐怖に苛まれる。彼は助けを求めて叫ぶが、誰も彼の声に耳を傾けない。
ある夜、ユウキは鏡の中に、血まみれの看護師の姿を目撃する。彼女はユウキに向かって不気味な笑みを浮かべ、ゆっくりと鏡の中から這い出てくる。ユウキは絶叫し、部屋中を逃げ惑うが、どこへ行っても彼女は追ってくる。彼女の鋭い爪がユウキの肌を引き裂き、血が流れる。
ユウキはゲームの開発元である「ナイトメア・コーポレーション」に助けを求めるメッセージを送るが、返信は来ない。彼はこのゲームが、プレイヤーを精神的に破壊し、永遠に閉じ込めるための悪魔の契約だと悟る。しかし、もはやゲームを止める術はない。
ユウキは絶望の淵に立たされながらも、最後の力を振り絞ってゲームクリアを目指す。しかし、ゲームのエンディングは存在しない。ユウキは永遠にこの悪夢の中に閉じ込められ、彼の精神はゆっくりと蝕まれていく。現実と悪夢の区別はつかなくなり、ユウキは狂気の淵へと落ちていく。
数日後、ユウキの部屋を訪れた友人は、変わり果てた彼の姿を発見する。ユウキはVRゴーグルを装着したまま、床に倒れ、息絶えていた。彼の顔には、恐怖と絶望が刻み込まれていた。部屋の壁には、血で書かれた「助けて」という言葉が残されていた。
「エターナル・ナイトメア」は、ユウキの人生を奪い、彼の魂を永遠に囚えた。そして、この悪夢は、次の犠牲者を求めて、今日もダークウェブの闇に潜んでいる。
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