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【怖い話|短編】血塗られた鬼哭

血塗られた鬼哭
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血塗られた鬼哭

東京・神楽坂の石畳の路地裏に、ひっそりと佇む古美術商「黒耀堂」。店主の黒木耀司は、その日、山陰地方の名家、橘家から買い取った古い太刀を鑑定していた。薄暗い蔵の中で、刀身から放たれる妖しい光が耀司の顔を照らす。黒光りする刃には、鈍色の刃紋が波打ち、まるで血が流れているようだった。鍔には鬼の面が彫られ、その目は爛々と赤い光を宿している。

鬼哭の目覚め

「鬼切丸…」

耀司は、思わず息を呑んだ。太刀から発せられる怨念のようなものが、耀司の肌を粟立たせた。

数日後、耀司は奇妙な幻覚に悩まされるようになった。誰もいないはずの店内に、血まみれの鎧武者の姿が見える。それは、鬼切丸を手にした橘義綱だった。

血塗られた悪夢

義綱は、爛々と光る目で耀司を睨みつけ、無言のままゆっくりと近づいてくる。耀司は恐怖で身動きが取れず、ただ立ち尽くすことしかできない。

そして、耀司の恋人、絵美にも異変が起きた。絵美は、夜中に突然目を覚まし、金切り声を上げて泣き叫ぶようになった。まるで何かに取り憑かれたように、意味不明な言葉を呟き、鏡に向かって「あっちへ行け!」と叫ぶのだ。耀司は、絵美を精神科病院に入院させることを決意した。

耀司は、鬼切丸について調べ始めた。古文書によると、鬼切丸は、橘義綱が戦場で数々の敵を討ち取った呪いの太刀だった。しかし、義綱は、鬼切丸の邪気に蝕まれ、狂気に陥り、自害したという。そして、鬼切丸は、義綱の怨念を吸い込み、さらに強力な呪いの力を得たのだ。

耀司は、鬼切丸を封印するため、山陰地方にある橘家の菩提寺、龍泉寺を訪れた。

呪縛の深淵

住職の龍玄和尚は、鬼切丸を一目見て顔色を変え、「この刀は、血の呪縛に囚われています。決して鞘から抜いてはなりません」と警告した。そして、龍玄和尚は厳粛な儀式を行い、鬼切丸を寺の奥深くにある霊場に封印した。

しかし、数ヶ月後、龍泉寺から鬼切丸が盗まれたという知らせが届いた。耀司は、再び血の呪いが世に解き放たれたことを悟り、戦慄した。

そして、その夜、耀司は再び悪夢を見た。血まみれの義綱が、鬼気迫る形相で耀司に襲いかかってくる。耀司は、恐怖で目を覚ました。すると、枕元には、絵美が書いたと思われる血文字が残されていた。

血文字の警告

「助けて」

耀司は、絵美を救うため、そして呪いを断ち切るため、鬼切丸の行方を追うことを決意する。しかし、耀司は知らなかった。鬼切丸は、すでに耀司のすぐそばまで迫っていることを。

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