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【怖い話|短編】母の日の贈り物

AIに驚く女性
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母の日の贈り物

母・洋子と娘の美咲は、美咲が高校生の時に父を亡くして以来、二人だけで支え合いながら生活してきた。

母子の日常生活

美咲は大学進学を諦め、高校卒業と同時に就職し、家から通いやすい工場の事務員として働いていた。時は流れ、10年の歳月が経ち、美咲は結婚を機に退職することになった。彼女の結婚相手は、成長著しいベンチャー企業の創業者であり、美咲は郊外から都内への引越しを控えていた。

新しい生活のスタートに胸を膨らませる一方で、一緒に暮らしてきた母・洋子との生活から離れることが心配で、素直に喜べないでいた。

そんな時、母の日が訪れた。美咲は母洋子が今でも変わらず父を深く愛していることを思い、特別なプレゼントを用意することにした。美咲の夫が関わるAI音声サービスを利用し、故人の声を再現できる最新技術で、父のボイスメッセージを作成する計画を立てた。

生前の父

彼女は家じゅうを探し回り、父の声が残されたビデオテープや録音を集めた。さらに、父が残した日記を読み返し、洋子との美しい思い出が綴られたページを基に、そのシーンに合わせて父の声でメッセージを添えることにした。

父の録音テープ

美咲はこの心温まるギフトが、母にとってかけがえのない母の日の贈り物になることを願っていた。

母の日の朝、美咲は特別に用意したボイスメッセージを包み、緊張と期待を胸に抱えながら洋子に手渡した。洋子は包みを受け取ると、その瞬間から何かを感じ取ったように微笑み、ゆっくりとそれを開けた。中から出てきたのは、シンプルながらも美しいデザインのデジタル再生器だった。

母の日の贈り物

「ありがとう」と洋子は何度も繰り返し、その声には感謝とともに深い感情が込められていた。彼女は再生ボタンを押すと、部屋はしばらくの沈黙に包まれた。やがて、亡き夫の声が静かに流れ始める。

「洋子、元気にしているか?先に逝ってしまってすまない。だが、ずっとそばにいるよ。悲しまないで。」という言葉が、部屋に温かい空気を運び、その声はかつての日々を思い出させるものだった。言葉一つ一つが洋子の心に深く響き、彼女の目からは止めどなく涙が溢れた。その涙は悲しみだけでなく、長い間抱えていた寂しさの解放と、愛する夫への深い愛情の表れでもあった。

涙する母

美咲は母・洋子の涙を見て、このプレゼントが彼女にとってどれほど意味深いものだったかを改めて感じました。彼女は心の底から安堵し、これで母も過去の痛みから少しは解放されるだろうと考えていました。母の日のその日、美咲と洋子は夜遅くまで過去の思い出話に花を咲かせ、父の存在を感じながら涙と笑顔で過ごしました。

数週間後、美咲は結婚を機に都内へ引越し、新しい生活をスタートさせました。初めのうちは夫との生活は幸せで、二人の愛は深まる一方でしたが、夫のベンチャー企業が急成長するにつれて、彼の忙しさは日に日に増していきました。美咲は夫を支えるためにも理解を示そうと努力しましたが、次第に二人のすれ違いが常となり、寂しさが募っていきました。

美咲の不安は、夫の行動から浮気を疑うようになった時に頂点に達しました。証拠はほぼ揃っており、彼の浮気は確定的でしたが、美咲はこれを直面する勇気が持てず、沈黙を選びました。そんな中で過ごす日々は、美咲にとってさらなる心の重荷となりました。

2年が経過したある日、突然洋子から電話がありました。

洋子が電話で告げる

母の声は震えており、何か異常事態が起きていることを美咲に告げました。「美咲、お父さんのメッセージが変わったの。怖い声で、『俺の娘を不幸にする奴は呪ってやる』と言ってるの。」洋子の言葉に、美咲の体が硬直しました。

あの温かった父のメッセージが、どうしてそんな形で変わるのか、その理由もわからず、ただただ恐怖が心を支配しました。

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