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【怖い話|短編】団地で遊んだ記憶

団地で遊んだ記憶
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団地で遊んだ記憶

この前小学校の同窓会があった。「30年ぶりか、懐かしいなぁ」なんて思いながらみんなの顔見たさで参加することにしたんだ。嫁はどうぞどうぞと参加を許してくれた。

同窓会の夜、クラスのほとんどのメンバーが集まっていた。久しぶりに再会した友人たちは相変わらずだった。良い意味で昔と変わってなくて安心したんだ。本当に楽しくて時間はあっという間。まるで時間を巻き戻したかのように昔話に花を咲かせ、子供の頃の馬鹿話や秘密の話で盛り上がる。

同窓会の再会

しかし、心の隅でずっと引っかかっていたのは、「たろにし」だけが来ていなかったことだ。

「たろにし、どうしたんだろうね?」あっちゃんが口にすると、部屋の空気が一変した。それまでの賑やかな雰囲気が、一瞬にして凍りつくようだった。誰もが口をつぐみ、誰かが話題を変えようとした時、けんちゃんが静かに話し始めた。

「あの日、みんな覚えてる?」声にはわずかな震えがあった。みんなの視線が集まる中、けんちゃんは続ける。「缶蹴りをしていたあの日、団地で…」彼の言葉を受け、僕たちはあの日の出来事を鮮明に思い出していた。それは、僕たちが忘れようとしても消えない、刻み込まれた記憶だった。

鮮明に僕は思い出した。僕は団地の隅に隠れ、缶を蹴る隙を見計らっていた時、突然の出来事に襲われた。知らない大人に腕を掴まれ服を引き裂かれた。あまりの恐怖で助けを求める声も出せない。ただただ必死に抵抗するしかなかった。石を投げつけ、その大人の額に当たった。そいつは血を出しながら逃げていった。

過呼吸になり苦しんでいた僕をあっちゃんが見つけ出し、家まで送り届けてくれたんだった。

あっちゃんと僕が帰った後のことを、けんちゃんが静かに語り始めた。「実はね、あの日…たろにし、最後まで見つからなかったんだ。」けんちゃんの言葉に部屋にいた誰もが息を呑んだ。いとぶーとたすくもうつむき加減で、何かを言おうとして口を開け、しかし言葉にできずにいた。

あっちゃんと僕が帰った後、けんちゃんはいとぶーとたすくと一緒になって、たろにしを探した。だが見つからない。時間はどんどん過ぎ、辺りが暗くなってきた頃、やっと団地の隅でぽつんと座るたろにしを見つけ出した。

たろにしの消失

たろにしの姿は、まるで別人のようだった。服は破れ、泥だらけでぼろぼろになっており、顔は青白く、目はうつろで、何かを見つめているようだったが、その視線の先には何もなかった。

「どうしたんだ?」けんちゃんが声をかけるが、たろにしは何も答えなかった。ただ、彼の瞳には深い恐怖が宿っていることが、はっきりとわかった。それ以上、たろにしを問い詰めることができず、けんちゃんたちは彼を家まで送り届けた。

しかし、その後、たろにしとの間には、ある種の壁ができたようだった。次第に僕たちとの距離を置くようになった。そして、ある日を境に突然引っ越してしまい、それ以来連絡が取れなくなってしまった。

同窓会でこの話を聞いたあっちゃんと僕は、当時の自分たちがどれほど無力だったかを痛感した。胸の奥が締め付けられ、深い無力感と後悔を感じている。

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